[第3回]己を知る、発想を変えてみる

第3回己を知る発想を変えてみる
これまで「自分を知る」ことの大切さ、そして自分を知ることで分かった「自分の武器」を活かし、磨き上げることについて書いてきました。

最後は自分の持っている長所、スキルと言ったものを、見方を変えて見てみる。別の角度から見つめてみる。一つの見方、考え方に固執せず、あらゆる可能性を探ってみることの重要性についてお話ししたいと思います。
 
 

荘子の話

己を知る01
荘子は紀元前4世紀の後半ごろの人物で、老子と並び、老荘思想の源流ともいうべき人。
彼は寓話を用いて、その思想を説いています。その荘子の寓話の中から、見方を変える、発想の転換についての話を紹介したいと思います。

恵子は荘子の友人(弟子という説も)。恵子が荘子にこう言いました。

魏の国王から夕顔の種を賜った。この種を植えたところ、五石(1石=約180ℓ)も入る大きな瓢がなった。

その瓢に水や酒などを入れて使おうとしたが、重くて持ち上がらない。これを半分に切って柄杓として使おうとしたけれど、あまりの大きさゆえ、一部分を切って柄杓にするとほとんど平面なので、水や酒がこぼれてしまう。

あまりに大きすぎて役に立たないので、それを砕いてしまった。と。

これに対して、荘子はこう答えます。

君は大きいもの使うのが下手だね。こんな話がある。

宋(古代中国の国の名)に良いあかぎれの薬を作る人がいた。
この薬を使い、綿を水に晒す仕事を家業としていた。ある人がこのうわさを聞きつけ、その薬を売ってくれと大金を積んだ。

彼は一族を集めこう話す。何代も前から綿を晒すことを仕事としてきたが、大した稼ぎにはならない。しかし、今この薬の作り方を売れば大金を得られる。一族は納得して、その薬の作り方を教えた。

薬の作り方を買った人は呉の国王に面会し、あかぎれの薬の作り方を知っている。兵士たちに使ってはいかがですか?と提案した。
そのころ、呉と越との間で諍いがあったので、この男にあかぎれの薬を作らせ、部隊の大将に迎え入れた。

冬に越との水軍で戦った際、この薬があったおかげで、呉の軍はいつも通りの力を発揮でき、越を破った。その功績として、男は領地を与えられた。

同じ技術を持つ者が、一方は領地を得て、もう一方は未だに綿を晒す仕事をしている。つまり、使い方(の発想)が違う。

この事例を話し、荘子はこう続けます。

君は五石も入る大きな瓢を持っていたのなら、少し発想を変え、大きな樽にして川に浮かべ、いかだの代わりにすることも出来たはず。
でも君は柄杓にも出来ないと文句を言って壊してしまった。

君は瓢の使い方を水や酒を入れるモノという考えにこだわっているから、そんな立派な瓢を壊してしまった。

目先の考え、目的ばかりに固執してしまい、結局は損をする人の特徴を言い得ています。
固定観念を捨て、発想を変えると、思わぬ発見や価値があるいことを忘れないようにしたいものです。
 
 

富士フイルムの新事業

己を知る02
2008年、あるCMを見て驚きました。それは富士フイルムのスキンケア化粧品「ASTALIFT」のCMです。

テレビではほとんど見ることのなかった、歌手の中島みゆきが出演していたのも驚きの一因でしたが、それよりも富士フイルムが化粧品を発売していることの驚きの方が、はるかに大きかった。

これより遡ること1年前、富士フイルムは2006年に化粧品業界に進出していたのです。
映画用のフィルムメーカーとして創業した同社が、なぜ化粧品業界へと参入を果たし、成功を収めたか。その経緯を簡単に辿ります。

写真用フィルムの国内シェアNo.1を誇っていた富士フィルムでしたが、1996年頃からデジタルカメラが一般に普及し始めたことで、写真用フィルムの需要は世界的規模で瞬く間に減少していきました。富士フィルムの写真用フィルムの売り上げも毎年200億円ペースで減少していったといいます。

これに危機感を抱いた当時の古森重隆社長(現会長)の大号令の下、富士フイルムは自社の持つ技術、強みを徹底的に見つめ直します。
この時に発見、発掘された技術が化粧品事業へとつながっていったのです。

それは、写真用フィルムと人の肌との共通点、類似性を発見したことから始まります。

写真用フィルムの半分はコラーゲンでできており、発光のための粒子、光を感じるための粒子などが含まれた多層構造。対して、人の肌の真皮にはコラーゲンが含まれており、色々な機能を持った細胞が多数存在しています。そこから化粧品の開発が始まっていきました。

こうして2007年から販売をスタートした「アスタリフト」ブランドは、初年度の10億円の売上から、4年後の2010年には100億円、2012年には135億円と売上を伸ばし、急成長を遂げることになるのです。
 
 

そのモノの価値をありのままに見る

己を知る03
化粧品には感性価値と機能価値があるといいます。

開発者の中村氏は、自分たちの得意分野である機能価値を重視し、化粧品の開発に心血を注いだと言っています。自分たちの武器、強みを活かし、相手の土俵には上がらず、自分たちの土俵で勝負する。この姿勢が、成功の最大のポイントだと私は思います。

新しい事を始める時には、どうしても過去の事例や慣習にとらわれ、その考えに沿って行動してしまいがちです。
大切なのは自分のスタイルを貫くこと。自分の持っている武器を最大限に活用する方法を考え抜くこと、発想の転換を試みること。
これが成功への礎になると思います。

発想を転換するには、まず、その物事から離れてみることです。
ピンポイントで見ていたがため、全体が把握できず、考えが偏ることは良くあります。

もう一つはそのモノをありのまま見てみることです。
私たちは知らず知らず、自分の価値観、世の中の価値観にとらわれています。

例えば、ピカソの絵画を見るとき。私たちはピカソという画家の功績や偉大さ、または彼の作品の価値を知ってしまっているので、″ただの絵画″として見ることは難しく、『ピカソの作品ならスゴイ』といった目で見てしまいます。

しかし、″ただの絵画″として見ないと、その絵画の本当の価値を知ることは出来ないのです。

今回の富士フイルムの事例も、自分たちの持っている技術を″ありのまま″見たからこそ、自分たちの技術、強みを発見できたのだと思います。
業界や過去の慣習に固執していたら、化粧品の開発はおろか、写真用フィルムと人の肌の共通点すら見つけ出すことは出来なかったでしょう。

自分を見つめ、自分の強みを見つけ出し、それを高めていく。そして自分の強みをありのまま見てみる。検証してみて、可能性を探る。

重複しますが、これが成功、自己実現への礎になるのだと思います。
 
 
 

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